【有機化学】ピロールとピリジンはどうやって合成するの?【ヘテロ芳香環】
今回もウォーレン有機化学を参考にしているニャ
考え方のポイント
芳香族ヘテロ環を合成するときには次のようなことを念頭に置いておきましょう。
①C-N結合を生成するのは簡単である
②分子内反応は分子間反応よりも優先的に起こる
③5員環や6員環を形成するのは簡単である
④目的物は芳香族化合物なので、非常に安定である
→【有機化学】芳香族とは?判定法を解説します!【ヒュッケル則】
この記事で芳香族の安定性について少し解説しています。
②~④の性質は非常に重要です。
実際に、自分のデザインした芳香族化合物を合成する際には注意深く合成計画を考える必要がありますが、ほかの化合物と比べて、反応が間違った方向へ進む場合よりも正しい方向に進む場合が多いです。
ピロールの合成
クノール(Knorr)ピロール合成という方法を使います。
余談ですが、ヘテロ環合成は人名反応が多いですが名前を覚える必要はないです。
反応名も紹介しますが、それよりも反応機構を理解すると良いです。
考え方①の図のように、酸性条件下でカルボニル化合物とアミンでエナミンが合成できることが分かると思います。
ピロールはエナミンの部分が2つあるので、ジケトンとアンモニアを作用させることで合成できそうです。
このように生成物から合成方法をたどって行くことを逆合成解析といいます。
実際の反応機構はこちらです。
とても長いように見えますが、実際の反応機構は非常に単純です。
アミンがカルボニル炭素に求核付加して、水が脱離します。
イミニウムカチオンが生成するので、隣のプロトンが脱離してエナミンになるといった機構が2回繰り返されます。
ピロールの2位と5位にメチル基が置換されていますが、もちろんこの部分が水素に置換されたピロールも合成できます。
原料のケトンをアルデヒドに変えるだけで合成できますが、アルデヒドの反応性は非常に高く、副反応が起こることが予想されます。
そのため収率が低下してしまうと考えられます。
また、反応機構の図は省略しますが、フランやチオフェンもほとんど同じ機構で合成できます。
ピリジンの合成
ハンチュ(Hantzsch)ピリジン合成を使います。
ピリジンの原料を考えましょう。
次の図のようになります。
これらの4分子がジヒドロピリジンを作り、その後酸化剤でピリジンに酸化するという機構です。
また、この反応はアルドール反応やマイケル付加といった反応が含まれるので弱塩基性条件下で行います。
それでは反応機構を考えましょう。
初めに塩基性条件下、ケトンのα位プロトンが脱プロトン化してできたエノラートがアルデヒドに求核付加します(アルドール反応)。
その後、アルドール縮合によって脱水します。
生成したエノン(カルボニル酸素とアルケンが共役している化合物)はもう一分子のエノラートが共役付加します(マイケル付加)。
そして、ジケトンにアンモニアが付加してジヒドロピリジンが生成します。
このアンモニア付加の段階はピロール合成の機構と同じです!
最後に、ジヒドロピリジンが酸化されるとピリジンが完成します。
生成物が芳香族性なので、この段階は簡単に進行します。
ここではDDQ(ジクロロジシアノ-p-ベンゾキノン)を用いた酸化の機構をお見せします。
また、原料のアンモニアの代わりにヒドロキシルアミン(NH2OH)を用いると酸化剤なしでピリジンを合成できます。
最後に
難しいと思った人は、自分で反応機構を写してみてください!
その際に、なぜその矢印を書くことができるのかを考えると記憶に残りやすいと思います。
ぜひこの記事を参考にしてください!
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