人口減少する日本の再生戦略 / シン・日本列島改造論

2025年08月11日 更新日:2025年08月11日



イラスト

「シン・日本列島改造論」の要約と感想をお伝えしたいと思います。


以前レビューした『覚悟の論理』と同様、この本も人口減少という日本の大きな課題に正面から切り込んでいます。

石丸さんがなぜ危機感を持つようになったのか、そしてどのような解決策を描いているのかが詳しく書かれています。

覚悟は決めるものではなく決まるものだ/「覚悟の論理」石丸伸二


前提


要約の前に、予備知識を確認しておきましょう。


人口動態


ニュースでも時々聞くように日本の人口減少は世界でも例がないほど問題となっています。

全国から人が集まる東京都も5年後には人口減少が始まるという予測も立っています。


また、2050年には日本人口は3300万人減少し、高齢化率は40%となることが予想されています。

東京都の人口が約1400万人であるため、相当な人数が日本からいなくなるのです。




(参考)総務省・資料


現在行われていること


少子化対策としてこのようなことが行われています。

政府として

・こども家庭庁設立

・児童手当の拡充

・教育費の負担軽減

・働き方改革


自治体として

・知事会での提言

・給食費無償化


例えば、泉房穂さんが市長を務めていた兵庫県明石市の政策なんかが有名ですよね。

当たり前ですが、子どものいる家庭(親)に向けた政策が多かったです。


要約


それでは本の内容に入ります。


きっかけ


筆者である石丸伸二さんは市長の前職は三菱UFJ銀行で働いていました。

為替アナリストとしてニューヨーク駐在となりました。

アメリカ大陸全土の経済動向を分析していたそうです。


ある日アルゼンチンへ訪れた際に、日本とアルゼンチンを重ねました。

アルゼンチンはかつて先進国と呼ばれ栄えていましたが、政治の失策が続き、経済が停滞して治安も悪くなるという結果となってしまいました。

日本もバブルが崩壊した後に、有効な政策を打てずに経済が衰退している状況です。

彼はアルゼンチンと日本を重ね合わせて、「このままでは日本が終わってしまう」と思ったそうです。


そんな中、地元の安芸高田市で市長の不祥事があり、行われた市長選挙に自ら立候補、当選しました。

彼は安芸高田市という日本でもかなり人口減少が進んでいる地域の市長を務めました。

安芸高田市の状況は未来の日本だと感じ、人口減少の解決策を模索していきます。


この本では「地方」と「東京」でできることがそれぞれあり、国民は自分の生まれ育った「地元」を大切にすることから始めるべきだと主張しています。


地元(地方)ができること


人口減少している現在の地方では、残念ながら先の長くない自治体も多いです。

しかし、人口減少という根本を解決する力はもはや地方自治体には残されていません。

自治体は、持続可能なまちづくりが最も重要だと考えています。


深く街を知る


そこで彼は、「住民一人ひとりが深く街を知る」ことが大切だと主張しています。


この本では人口減少しても耐えうる持続可能なまちづくりが必要だと述べられています。

一方で、そのようなまちでは収入を増やすことだけでなく無駄を削減することが重要となってきます。

無駄を削減するということは住民の反発を買うことが必至ですよね。

例えば、利用者の少ない施設を廃止するなど。


つまり、そのような決定をするにあたって住民一人ひとりの理解・当事者意識が大切となってきます。

そのために、まちを自分にとって特別な場所とすることが大切だと考えました。

市長時代には「サンフレッチェ広島」、「神楽」、「毛利元就」という3つのコンテンツを盛り上げることによって安芸高田市を深く知るきっかけを作っています。


みなさんの地元にも気が付かなかったけれども、実は当たり前ではない文化やコンテンツがあると思います。

それを深掘りすることが新しいまちづくりの第一歩となります。


まちの「今」を知る


自分たちのまちの魅力に気がつくことが、新しいまちづくりの第一歩だと述べました。

次は住民一人ひとりが現在のまちの状況を知ることが重要です。


その理由の1つ目は、現在まちが抱えている問題を自分ごととして捉えてほしいという想いです。

そして2つ目は、住民が政治に注目することで議会が正常に機能するからです。


どの自治体でも何かしらの問題を抱えていて、それを解決するために議会で議論が行われています。

住民はどのような問題があって、どういうアプローチで解決しているのか興味を持つ必要があります。


首長は政策を提案し、議員はその良し悪しを議論することが役割です。

議員がどのような基準で賛成・反対を決めるのかを把握することも非常に重要です。

また、議員の動向をチェックすれば誰のために政治をしているのか(住民のため・友人のため・自分のためなど)も浮き彫りになってきます。


真のまちづくりは住民の政治参加が重要です。

この本では開かれた議会を作るために、まちの状況を知り、議会に注目するべきだという主張をしています。


東京のできること


日本全体として、持続可能な社会を作っていくためには東京ができる役割はかなり大きいです。

多少、東京に不利益が出たとしても日本が発展してゆくためには必要な判断もあります。

東京は日本のリーダーとして、持続可能な社会づくりの方向性を示すべきだと主張しています。


東京一極集中の是正


これは東京ではなく政府として取り組むべき課題なのではないかという批判もありますが、日本、そして東京都民の生活の質向上のためにも東京都が率先して取り組む課題です。

東京一極集中がもたらすデメリットは満員電車、交通渋滞、ゴミ問題など多岐に渡ります。


そして、一番の問題は災害です。

首都直下型地震が起きた場合、ヒト・モノ・カネが東京に一ヶ所にまとまっているリスクはかなり高いです。

安全リスクを考えると首都機能を分散させるという手段もありだと考えられます。


政府として、一極集中の是正に取り組んでいるという一面もありますが、現状では東京都に一切のやる気が見られません。

これでは、短期でできることも数十年かかってしまいます。

東京がリーダーシップを発揮してこの問題の解決に取り組むべきではないでしょうか。


また、アメリカのように、地域ごとに特色を持たせることも大切だと述べられています。

例えば、シリコンバレーにIT企業が集まるといった具合に。

日本でも、愛知県の自動車産業や群馬県のアニメ・漫画産業があります。

このように全国で役割分担ができれば、地方の活力を取り戻せるのではないでしょうか。


このように人口減少した社会では「多極分散」、そして「人口のリバランス」という考え方が重要となってきます。


感想


先日、都議会議員選挙と参議院選挙がありました。

私は石丸さんが立ち上げた「再生の道」を応援していましたが、結果は0議席で、大きな落胆を覚えました。

印象的だったのは、人口減少対策として国政で教育政策を重視していたことです。

従来の教育政策は親への支援が中心でしたが、石丸さんは「子ども」本人と「教育者」の両方を直接支援する方針を掲げていました。

一人ひとりの能力を引き上げ、日本を立て直すという視点は新鮮で、本質を突いていると感じます。

人口減少や将来の日本に対する彼の危機感には強く共感しており、もっと多くの人に理解されてほしいと心から思います。


私たちができる最も大きなことは政治の監視だと感じます。

特に、市政に目を向けている人はまだ少なく、地方の衰退を止める第一歩は地域レベルでの政治参加です。


もう一つは、日本の危機を理解し、周囲に共有することです。

政治の話は日常では話題にしづらいですが、せめて選挙前だけでも意見を交わすことから始めたい。

そこから新しいまちづくりが動き出すはずです。

同じ志を持つ仲間と、日本を少しずつでも良い方向へ進めていきたいと思います。


未来は、政治家だけでなく、私たち一人ひとりの手の中にある――そう信じて行動を続けたい。

急速に人口減少が進む安芸高田市を「日本の未来図」と捉え、解決策を探ります。


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